みなさんこんにちは、特別養護老人ホームで若手看護師をしております市原です。
施設看護師ってどんなことを勉強すると思いますか?
私が今の特養に転職して、一番最初に勉強したことは下剤についてでした。
施設看護では利用者の日常生活に苦痛が少ないよう普段からの排便コントロールが重要となっており、それに伴ってある程度の知識が必要になってきます。
そんなわけで今回は色々な下剤の薬効・長所短所・使い分けについて説明していこうと思います。
こんな疑問をお持ちの方にお勧めの記事です。
- 下剤ってたくさんあって覚えられない!
- センノシドとマグミットって何か違いがあるの?
- 同じ下剤を長期内服している方が便秘になってきたんだけどどうしよう!
- 漢方とか座薬とかは、何をもって使い分けるの?
- 自分自身が下剤を飲むとしたら何がおすすめ?
これはどこでも共通だと思いますが、各仕事で必要な知識はその場で働いてからでないと分からなかったりしますよね。
ちなみに今回の記事のテーマとなったコール内容はこちら
酸化マグネシウムとセンノシドて同じ下剤だけど何か違うの?
違うよ~
介護施設は暮らしの場です。
施設看護に必要な知識は、下剤の使い方をはじめとして、皮膚ただれに使う軟膏の選び方や基礎バイタルの変動による生活上の工夫など、家庭医学にも近しいことが多いです。
身近な医学の勉強は実際に自分の役にも立つので、学んでいても楽しいですよ♪
病棟勤務の頃は、医師が判断して処方してくれていたので勉強の優先順位が低かった下剤。
しかし薬の作用機序を理科会していると看護の視野が広がって、このような知識の積み重ねが仕事を楽しくしていきます。
なにより自分が使うこともあるので、知ってて損は無し!
一緒に確認してみましょう!
施設看護師の実態を知りたい!
便秘には2種類ある!
まずは、便秘の種類について確認です。
便秘になるメカニズムには、どんなものがあると思いますか?
うーん…お腹に力が入らなくて出せないとか?
腸の動きが悪くなって詰まっちゃうとか!
単純に腸が狭いとか…?
全部正解!!
大まかに言うと便秘には、器質性便秘と機能性便秘の2種類があります。
①腸の形からして出にくいタイプ
②排便する機能に不具合があるタイプ
器質とは、すなわち形状のこと。腸の形状からして便秘になるような疾患が引き起こします。
対して機能とは、その名の通り機能(働き)のこと。腸の働きが低下したり異常が出たりして便秘を引き起こします。
器質性便秘に関しては、形状を整えたり改善するために大腸内視鏡等の外科的治療を取られることが多いです。
下剤の薬効・使い分け
便秘の種類について知ったところで、今度は各下剤について学んでいきましょう。
よく現場で使われる、メジャーな下剤を集めたよ~
ひとつずつ見ていきましょう。
酸化マグネシウム/マグミット
薬効:腸の水分分泌を増やして便を柔らかくする
→ 塩類下剤
- 習慣性(使い慣れて腸が疲れたり効き目が弱くなること)や依存性がほとんどない
- 脱水予防で服用時は水を多く飲むこと
- 高マグネシウム血症に注意
下剤を使う時の第一選択だね
センノシド
薬効:センナという成分が大腸の動きを活発にしたり、腸管内の水分分泌を促進
→ 刺激性下剤 アントラキノン系 センナ含下剤
【他:プルゼニド アローゼン/ピムロ アジャスト】
- 服用後8〜12時間で作用
- 大腸メラノーシス(※後で説明)を起こしやすい
どれだけ水を飲んでも便秘だったり、マグが効きにくい時は切り替えた方がいいかも
麻子仁丸
薬効:大黄(ダイオウ)という成分が大腸の動きを活発にさせる
→ 刺激性下剤 アントラキノン系 大黄(ダイオウ)含便秘
【他 タケダ漢方便秘薬】
- 子宮収縮の副作用があるため妊婦には向かない
漢方が効く人や、きちんと食前で内服ができる人なら!
ピコスルファート
薬効:ジフェノールという酵素が大腸の動きを活発にする
→ 刺激性下剤 ジフェノール系
【他:ラキソベロン ビオフェルミン】
- 作用時間は7〜12時間
- 比較的緩やかに作用する
- 習慣性は少ないが、長期服用で腸管の炎症を起こしやすい
- 水に混ぜる方が理想的だが、味噌汁やお茶に混ぜても効果が弱くなることはない
滴下数で細かく調整したい、味噌汁に混ぜてサラッと飲みたい人向け
コーラック
薬効:ジフェニルメタンという化合物が大腸の動きを活発にする
→ 刺激性下剤 ジフェニルメタン系
【他:レシカルボン座薬】
- 胃でも作用してしまうため内服薬は腸まで届くようコーティングされており、錠剤を割って飲むと効果が減る。
- 牛乳を飲んだ後や制酸剤服用中など、胃酸が薄い時に飲むと胃で溶けやすいので注意
- 副作用に子宮収縮あり、妊婦には向かない
- 習慣性あり
- 医療用医薬品として定められているのは座薬のみ
砕いたり噛んだりせずに飲まないと効果が無くなっちゃうね
座薬に関しては溶けるまでの30分間を横になって我慢できる人なら大丈夫
アミティーザ
薬効:小腸の水分分泌を増やすなど、主に小腸に機能して排便を促す
→ 上皮機能変容薬
【他:アミティーザ グーフィス リンゼス】
- 胆汁酸は腸の運動を促進します。グーフィスは小腸で胆汁酸の再吸収を阻害して腸への排泄量を上げる作用があるので あらかじめ食前に内服
- リンゼスは腸管への水分分泌を増やすので、食事の水分摂取も乗算して一気に下痢にならないよう食前に内服
- アミティーザも小腸の水分分泌を増やす薬ですが空きっ腹に内服すると悪心を起こしやすいので食後に内服
- リンゼスは過敏性腸症候群の薬なので、それによる腹痛等にも効きます
副作用が少ないから、この薬が効くなら定時薬で飲んでもいいかも。ちょっと値段が高いけどね。
結局どの下剤がよく効くの?
では、結局どの薬が1番強いのでしょうか。
そのことに関しては、利用者の病態や体質によって変わるので一概には言えません。
しかし、臨床上での下剤の使用量についての実験結果では
ラキソベロン内用液6滴≒プルゼニド錠1錠≒アローゼン顆粒0.5g~1gとされています。
ラキソ6滴 ≒ センノ1錠 ≒ ピムロ0.5g~1g
センノシド2錠でだめならラキソベロン12滴に変えてみる等、その人に合う下剤を探してみる事が良いかもしれません。
重要な副作用 大腸メラノーシスとは
特に刺激性下剤で起こりやすい副作用
大腸メラノーシス について説明します。
大腸メラノーシスとは、『下剤を長期内服することで、大腸の粘膜に色素が沈着し黒くなった状態』のことを指します。
黒くなること自体は問題ないのですが、こうなってくると下剤に対してかなりの耐性がついてしまったり、大腸粘膜がだいぶ傷ついて潰瘍や癌発症のリスクが高まります。
大腸メラノーシスは可逆的であるため、長期間下剤の内服を中止することで腸がまた元のピンク色に戻るケースが多いです。
また、大腸メラノーシスに至らずとも、下剤の耐性が徐々についてくることにより腸が動きにくくなって弛緩性便秘を引き起こしやすくなります。
そのため、排便がないからと言ってすぐ下剤を付けるのではなく、水分摂取や便器に長時間座ってのの字マッサージなど、下剤を使わずに排便を促すことが理想的です。
最後に
いかがでしたか?
みなさんの知っている下剤は出てきたでしょうか。
まとめると以下になります。
- 便秘には器質性便秘と機能性便秘の二種類ある
- 下剤は腸の動きを活発にする刺激性、腸から水分を分泌しやすくする浸透圧性、小腸に作用する上皮機能変容薬の三種類ある。
- その人の体質や便秘の種類をみて下剤を使い分けることが必要
- ラキソ6滴 ≒ センノ1錠 ≒ ピムロ0.5g~1g
- 下剤の長期内服は大腸メラノーシスを引き起こしやすいので注意
下剤の相関図をまとめてました。
使用薬剤も施設によってはまばらだったりするので、上記にない下剤をご存知でしたらぜひ分類や禁忌等を調べてみてください。
ちなみに新人看護師として病棟で働いていた頃は「薬効のわからない薬を配薬するな!」と散々言われ、覚えられないので単語帳にして持ち歩いていました。
優先度の高いこと、興味のあることから少しずつ覚えられれば大丈夫。許してくれない先輩がいたら、逃げましょう。
それでは、また!
私は下剤を使うの怖いから、レモン水を飲も~っと
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